第19話 沈黙へのカウントダウン

夜空に月が昇り、冷たい風が吹く。

深夜午前、学園の廊下でロザリアはサイレンスロードを通じてソル・ヘリオスと通信をしていた。

ロザリアの前に表示された画面には音声のみという文字。

だが、画面からはソル・ヘリオスの声が聞こえてくる。


ソル・ヘリオス「…帝国にはマツ博士の痕跡は見受けられない。ソアレがどこかに隠している可能性も否めないが帝国軍を使ったのなら流石に俺にも届く。あの件以降、俺は監視を強めているからな」


ソルの言う、あの件とはナイが幼い頃に住んでいた村への襲撃の事だろう。

ロザリアは目を伏せる。…彼女の後ろにいたタキが口を挟み、ソルと会話する。 


タキ「久しぶり、ソル」


ソル・ヘリオス「…ああ、久しぶりだな。軍師」


タキの挨拶にソルは返す。

もう、長い事会っていないのに声を覚えているのかとタキは感心しつつも、ソルに軍師と呼ばれたタキは肩を竦めて、おどけて笑った。


タキ「…一体、何時の話をしてるんだい。ところで、マツ博士の研究で生まれた彼女が君の目的かい?」


彼女、大人のフリージアの方だろう。タキの指す彼女という言葉にソルは「そうだ」と肯定した。


ソル・ヘリオス「軍を動かし捜す事も出来たが動かせばソアレにバレる。…俺一人では彼女を守りきることは出来ないだろう」


ソアレ。太陽帝国第一皇子にして王位継承権の筆頭。

本来ならソル・ヘリオスは彼を守らねばならない。ソルの役目は王室の守護が第一優先の筈。

タキはソルとの会話でそれを思い出し、だが首を傾げる。

…どうして、そうなったんだ。


タキ「…話を曲げるけど、今までの君の言葉から察するに皇帝の次位の君は孤立してる、と考えて良さそうだね」


タキの大きな眼鏡が光る。

画面の向こう、ソル・ヘリオスは息を吐く。

タキに通信画面を譲り、ロザリアは横にずれて二人の会話を聴いていた。

千年戦争の時、ソル・ヘリオスは王室と帝国を守る為に戦い続けた。ソルの真意は当時も今もロザリアには解らない。

だが、彼はミトラスがいなくなってから孤独にも見えた。

真に彼を理解していた皇帝はミトラスだけだったようにも思える。


ロザリア「……」


ロザリアはタキに言葉を紡ごうと口を開く。

だが、タキは首を横に振って制した。

…タキの言わんとしている事を察したロザリアは言葉を口にするのを止めた。

タキの先ほどの質問に暫く間を空けたソル・ヘリオスはやはり肯定した。


ソル・ヘリオス「…その通りだ。今の俺は過去の栄光で何とか立場を保っているに過ぎない」

 

ソルの返答にタキは苦笑する。


タキ「帝国の王室は随分と罰当たりなんだねえ…」


タキの素直な言葉に画面の向こうでソルが笑ったような気がした。

僅かに聞こえたソルの小さな笑い声にロザリアは何とも言えない気持ちになる。

知らない仲では無い。幾度も刃を交えた事もあったが。


伏せた目と俯かせた顔、ロザリアの様子を見てタキは横目で見て思う。

…まあ、君も結構甘いよね。

見た者、触れた者、話した者。自分と関わった人間を、守りたいと救いたいと。ロザリアはそう我儘を言う事があった。

昔に比べて大人になった彼女は多少の計算高さを身に着けたが、根っこの部分は少女の頃から大して変わらない。

その我儘が昔から嫌いでは無いタキはロザリアの想いに善処しようと思うのだった。


タキ「話をフリージアに戻すよ。ソル、マツ博士の研究に手を貸していたのはソアレでいいのかな」


タキは一応、ソルに確認するが頭の中ではソアレだと確信していた。

ソアレ皇子、彼は幼い頃のナイとナイの住んでいた村を襲撃した際に指揮をとっていたとされる。

表向きは帝国の将が指揮したとされ、彼は一介の村を襲撃し略奪行為をしたとされ責任を取らされて処刑されている。

ソアレは将に罪を擦りつけ、公で彼を消した。

タキの問いにソルははっきりと返した。


ソル・ヘリオス「…そうだ。国の金で行った極秘研究。それがマツ博士を使っての魔界の欠片の研究だった。恐らく、軍の兵器に使うつもりなのだろうな」


ソルの言葉にタキは「なるほどね」と呟く。

ソアレ第一皇子はかなり危険な人物と見て間違いはないだろう。

だが、タキはもう一つの疑問を持った。

太陽帝国が強国になったのは他大陸の強国にも対抗しうる手段が遙か昔からあったからだ。

強国にも抑止力に成る程の武器。

それを扱えるのが太陽属性を強く受け継ぐ王族だ。

その武器さえあれば、古代兵器も魔界の欠片を軍事運用になどせずとも強大な力として十分。


タキ「…ソアレは石を使用できないのか!」


タキの行き着いた答えにソルは数十秒、沈黙した。

帝国と月の王族との関わりがある者なら行き着いて当然なのだが。

それでも、やはりこの男はすぐに気づくなとソルは素直に思った。

そして、ソルは覚悟を決めて断言した。



ソル・ヘリオス「ソアレは太陽帝国の皇帝の資格は無い」


彼らが帝国に何をしようとしているのか、ソルは解っている。

王の次位の立場の自分の発言が重要な事もソルには痛いほど理解はしているも、全てを承知の上でソルは断言したのだ。

このまま、国を放置していればソアレの暴走で国は他国と戦争になる。

その戦争で多くの血が流れる前に止めて欲しい。

ソル・ヘリオスはそう願った。


●●

ソル・ヘリオスとの通信を終えた。

昔から自身の感情を素直に表現出来ないのはタキもロザリアも知っていた。

だから誰かが察して、理解してやれれば良いのだが。もう、ソルの身近にはいないのだろう。

タキはロザリアと学園の廊下にいたが、何かを考える素振りをしていた。

ソルとの通信で何か思う所があったのだろう、とロザリアは聞かなかったが。

突然、タキは「うん」と言ってロザリアの方に身体を向けた。


タキ「ロザリア、僕は少し調べたい事が出来た。悪いけどサイレンスロードの通信アドレス教えてくれない?」


タキの言葉にロザリアは深くは追及せず、二つ返事でサイレンスロードの通信アドレスをタキに教えた。


●●

タキにサイレンスロードのアドレスを教えれば、タキは早足で廊下の奥へと消えて行った。

どうせ、自室に籠りに行ったのだろうとロザリアは見送り、さて自分も自室に帰ろうかとタキが行った方とは反対の方向へ振り返った。


みかん「ロザ!」


振り返った瞬間に視界がみかんでいっぱいになりロザリアはらしくもない悲鳴を上げた。


ロザリア「うひゃあっっ!!」


ロザリアは後ろに尻餅をつきそうになったがどうにか堪えて、涙目になりながらみかんを睨み付けたが逆にみかんの泣きそうな声が被り物から聞こえて来た。


みかん「ひどいヨ!何回もロザリアに通信送ったのに全然返信ないんだもん!」


みかんに責められ、ロザリアは通信画面を開いた。

通信履歴には十回ほどみかんからの通信を受けていた履歴が残っており、ロザリアは素直に謝った。


ロザリア「あ、ごめん。ソルと通信してたもんで」


ロザリアの謝罪と言い訳にみかんは腰に手をあてて怒っている素振りだけした。

声音は全然、怒っていない。


みかん「ソル君かー。じゃあ、仕方ないかな」


言いながらみかんは頭を縦に振って頷く。

ロザリアは首を傾げてみかんに聞いた。


ロザリア「で、要件は?」


みかんの顔を覗き込むようにロザリアは被り物の奥の人物に言う。

ロザリアに聞かれ、みかんは画面を表示しロザリアの前に持ってきた。

目の前に表示された画面の内容をロザリアが読む前にみかんが声を出してロザリアに答えた。


みかん「エルフの森で子供が攫われたっていう任務が、」


被り物のせいかいまいち、緊急性を感じられないが入っていた任務は十分、緊急を要するものでロザリアは聞いた瞬間に声を上げる。


ロザリア「緊急じゃないの!?それ!」


エルフといえば極端に外部との接触を拒む種族だ。エルフ達は相当な事でもなければ外部には頼らない。

外部に頼るぐらいなら内部を切り捨てる。そういう考えの種族である。

それが頼ってきたということは相当な何かがあったのだろう。

ロザリアが瞬時に察することが出来るのは、攫われた子供は一人や二人では無いということだ。

自分の通信画面を開き、ロザリアはクラス委員長のコウに通信を入れた。

どうせ、あのにぶタコの事だから今夜も起きてるだろ。

ロザリアの予想通り、コウは起きていたが突然の通信に画面の向こうで間抜けな声を上げていた。 


コウ「ほわあっ!?な、どうかしたのか?!」


驚きと困惑の声を上げたコウが画面を真っ直ぐ見てくる。

しかし、生憎ロザリアには説明している時間の余裕は無かった。


ロザリア「緊急任務が入った、詳しい内容はみかんから聞いて!私が直行する」


委員長という立場の為、深夜でも音声通信が入れば強制受信するよう設定しているコウは何時如何なる時間でも通信が入るようになっている。

ロザリアはコウに甘え、通信を入れるたが喋り終われば通信を一方的に切った。

画面の向こうのコウはさぞかし困惑しているだろうが構っている余裕は無い。


ロザリア「みかん、後はお願い!行ってくる!」


ロザリアは正面に立ち、みかんに言う。

相変わらず被り物で表情は解らないが、ロザリアが笑えばみかんは手をロザリアの頭に置いた。

みかんの身長はロザリアよりもかなり高い。

自分の頭に置かれたみかんの手の感触を懐かしく思うが、今はそれどころでは無い。

ロザリアはすぐに駆け出し、廊下を走った。

廊下を走り、あっという間に廊下の奥へと消えたロザリアを見送ってみかんは独り呟く。


みかん

 「生贄の少女が禁断の存在を呼び出すきっかけになる。気をつけて、ロザリア」


●●

廊下を走るロザリアは学園の玄関へと向かう。

学園の玄関はかなり広めに作られており、移動魔法を使うことを前提にされている。

その途中、ロザリアは前方不注意から何かとぶつかった。

幸い、激しい衝撃ではないから後ろに倒れなかった。

否、受け止められたと言った方が正しいのか。


ロザリア「わっ…!あ、あれ?」


ぶつかった時、思いっきり鼻をうったロザリアは痛みから鼻を手で抑えて顔を上げた。

目に映ったのは、こんな夜更けでも煌めき輝く銀髪の驚くほど美しい青年。

学園の黒の制服を身に纏ったソウマがロザリアの目の前に。


ソウマ「どこに行ってもいないから、捜してたんだ」


ソウマは言って柔らかい微笑みを浮かべた。

その微笑みですら、老若男女問わずが魅了され絵師が泣いて喜びそうだ。

ロザリアは素直に思うが、今は急いでるのだ。


ロザリア「あ、ごめん!任務が入ってて、急いでて…」


慌てて喋っているせいか途中で詰まりながらロザリアはせわしなく手足を動かす。

わたわたするロザリアにソウマはきょとんとした表情で言う。


ソウマ「なら、俺もいく」


ソウマの言葉にロザリアは「え?」と目を大きく開いた。

そして、ソウマの言葉を理解したロザリアは首を横に振る。


ロザリア「あ、危ないわよ!ソウマ」


正直、任務の詳細も掴めていないのに。

何が起きるかはロザリアにも解らない。その任務にソウマを連れ出し、危険な目に合わせる可能性がロザリアには見えた。

だが、ソウマに約束した言葉を思い出してロザリアは迷う。

「私はソウマを守る。貴方に少しでも世界を見て貰いたいから」

そうだ、とロザリアはソウマを見る。

守り抜けばいいのだ、何があっても自分が。


ロザリア「ソウマ、やっぱり一緒に行こう!」


ロザリアはソウマの手を握った。

彼女の言動と行動にソウマは少し戸惑ったがすぐに表情を緩め、頷く。


ソウマ「うん、行こう」


●●

学園の玄関から移動魔法を使ってロザリアとソウマはエルフが住むといわれる森の入り口まで魔法で瞬間移動した。

辺りを見回せば、森林地帯の奥地といったところだ。

しかも、夜中で真っ暗である。


ロザリア 「さて、」


ロザリアは自分の胸の前に手を持ってきて人差し指をたてる。小さな光の玉を指から出す。

光魔法の一種で光の玉が発光し、自分とその周囲を明るくしてくれる。


ソウマ「…方向が解らないな」


ソウマはロザリアから離れないように彼女のすぐ後ろで言った。

見渡しても木、しかも夜。

だが、ここはエルフの住む森の入り口。エルフは必ず入り口の前に結界を張っている。

侵入者を惑わす為の。


ロザリア「ソウマ、私から離れないでね」


ロザリアは後ろのソウマに言って、前を向いて歩く。

真っ直ぐ進み、十歩ほど進んだところでロザリアは歩みを止める。

光の玉を維持している手とは別の手を拳にしてロザリアは構えた。

深呼吸してロザリアは自分の前に勢いと力を込めて拳を入れる。


ロザリアの拳は何かにぶつかり、そして遠くから笛の音が微かにソウマの耳に聞こえた。

●●

ロザリアが見えない何かを殴ったのと同時に聞こえた笛の音。

それまで静かだった森の木々が急にざわつき出し、ソウマはロザリアに声をかけた。


ソウマ「ロザリア、何か…」


ソウマがロザリアに声をかけた時には既に銀の冷たい光りを放つ刃がソウマとロザリアを取り囲んでいた。

そんな状況だがロザリアは大して心を乱していなかった。


ロザリア「依頼が来ていたから詳細を聞きに来たのだけど。話、通じるかしらね」


ロザリアとソウマを囲んでいるのは武器を手にしたエルフの大人達だろう。

恐らく、子供を攫われ侵入者となれば今の彼らは冷静を失うに違いない。

ロザリアは気配と、自分達を囲むエルフの大人達の行動を感覚で追う。一人のエルフが僅かに腕を動かしたのを察知したロザリアは細腕で決して軽くは無いソウマの身体を抱えて上へと跳んだ。

エルフの大人達はロザリアが跳ぶと同時に先ほどまで二人がいた位置に剣を手にした数人で襲い掛かっていた。


ソウマ「ロザリ…」


エルフの大人達が自分達が先ほどまでいた場所に襲い掛かっているのを見下ろしたソウマは顔を青くしてロザリアの名前を呼ぶ。

何せ、森林地帯の背の高い木の僅か上まで跳んだのだ。

ロザリアの身体能力は一体、どうなってるのか。ソウマにはとても信じられなかったが当の本人は涼しい表情をして言う。


ロザリア「舌、噛まないようにね!」


ロザリアはソウマを抱えたまま降下した。

剣を手にした者が五人。どうせ後方に弓を持ってる者もいるだろう。

ロザリアはソウマを抱えたまま降下して、先ずは剣を手にしたエルフの男の肩に乗った。

乗ったというよりは潰した、という表現が正しいが。

荒々しく、再び元の場所にエルフの男を下にしてロザリアはソウマを抱えて立つ。

すかさず、もう二人が剣を振り上げてロザリア目がけて突っ込んできた。

挟み撃ちにしようと突っ込んでくる二人にロザリアは「やれやれ」と苦笑し、軽い動作でジャンプして一人の顎に蹴りを入れた。

後ろに突っ込んでくるもう一人を振り向き様に足の甲で首を蹴った。

計三人を沈めたロザリアは隙を見せる事は無い。

ロザリアは沈んだ男達が手放した剣の一つを靴の爪先で蹴った。

剣は宙に飛び、ロザリアはそれを蹴って更に遠方へと飛ばした。剣は軌道を変えることも無く跳び、ぶつかった音と遠くから若い青年の声が聞こえた。


ロザリア「…私は別にいいんだけど、まだ続けるの?一応、攫われた子供を助けに来たんだけど」


ロザリアは言い放って、剣を手にしてるエルフの残った者達を睨みつけた。

その視線と言葉にエルフ達は動きを止める。


剣を手にしたエルフの男「…、誰か長老に!」


だが、半信半疑のエルフは潜んでいる仲間に声を上げて伝え、剣の切っ先をロザリアに向ける。

ロザリアは深々とため息を吐いた。


ロザリア「ここでもたもたしてたら攫った奴ら長距離の場所に逃げるわよ?」


ロザリアが手を出せる場所に逃げれば別に構わないのだが太陽帝国に逃げ込まれると手がだせなくなる。

エルフの森が位置するのは南大陸の太陽帝国にも近い場所。

ロザリアの言葉はエルフの森の入り口から現れた人物が拾った。


エルフの長老「武器をしまえ。その制服はアレクス殿の学友だ」


暗闇の森の中から現れたのはエルフ特有の長い耳と美しい外見の青年だった。

伊達に闇の競売を潰し続けてないなあ、とロザリアは思った。

アレクスは外部との接触を拒む種族からは英雄視されていることがある。

闇の競売で取引される種族の中にエルフも含まれているのだ。潰したついでに救出し、アレクスは親元に返す。

思い出し、ロザリアは一先ず友人に感謝した。

会話を切り出したのは長老だった。

周囲のエルフ達は武器をしまい、それを確認したロザリアは抱えていたソウマを地面におろして長老の言葉を聞く。


エルフの長老「立ち話で申し訳ない。つい数時間前に結界が壊され、盗賊のような男たちに子供が数人連れていかれた。…我々の結界は盗賊風情に壊されるものではないのだが」


長老の言葉を聞いたロザリアは口を開く。


ロザリア「何に壊されたの?」


ロザリアが長老に聞けば、長老は少し間を空け。


エルフの長老「…進化した魔界の欠片だ。奴らは魔界の欠片を使役していたのだ」


長老の言葉のロザリアは目を大きく開く。

そして突然、ロザリアの頭の中に映像が流れる。

少女の血、聖杯に注がれ。それは怨念とこの世への執念を呼び起こす。

赤のドレスを身に纏った小柄な少女の後ろ姿がロザリアの頭の中に浮かぶ。

その存在は呼んではならないもの。

リーリエが昔、言っていたのを思い出す。

呼んではならない存在。少女は世界への憎しみを振りまき、全てを壊してしまうから。

ロザリアの頭の中に突然、浮かんだそれは呼んではならない黙示録の少女の姿だった。


学園の食堂で子供のフリージアと大人のフリージアと共にいたナイは食堂の壁に付けられた大きな窓から見えた外を見た。

暗い夜空に浮かぶ月。

…先ほど、コウからロザリアがソウマを連れてエルフの子供の救出に行ったのだと聞いたナイは、夜空の月を心配そうに眺めた。


ナイ「…大丈夫かな、ロザリアとソウマさん」


ナイの心臓が早鐘を打つ。

何かの警告のようだとナイは月を見つめていれば、子供のフリージアがナイを心配そうに見た。


ナイ「…ロザリアは強いから、ソウマさんの事だって心配ないと思うんだけど」


独り言のようにナイは呟く。

ロザリアは数多の戦いをくぐり抜けているのだ。大丈夫に違いない。

そうナイは思うのだが…。

ならば、何故こんなにも心がざわつくのかとナイは不安感を拭えなかった。


第二十話に続きます